ハザード別の設計・評価方法、製品タイプ別チェックリスト、認証の流れ。規格の全体像は規格編へ。
子ども用品の事故は「誤飲・窒息」「ひもの絞扼」「鋭利部」「挟み込み」「強度不足」「化学物質」「可燃性」の7パターンにほぼ集約されます。1つずつ、規定 → 試験方法 → 設計のコツの順で見ていきます。
図3 小部品シリンダー。どの向きに入れても完全に収まる部品は3歳未満向けに使えない
図4 小球試験。球形は小部品より大きくても窒息リスクがある
| 規定 | 数値 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 小部品(3歳未満向け) | φ31.7 × 25.4〜57.1mm の円筒に完全に入る部品 禁止 | そのまま入れて確認+濫用試験後(落下・ねじり・引張・圧縮)に外れた部品でも確認 |
| 小球(3歳未満向け) | φ44.5mmの円を通過する球・半球 禁止 | ゲージ通過試験。3歳以上向けは警告表示 |
| 事故実態 | 約30mm以下で誤嚥事故の約8割 | 規格ギリギリを避け、余裕を持った大きさに |
| 半球形の容器状 | — | 口鼻を覆う窒息防止に通気穴などが要求される |
子ども服のひもは、フードのひもが遊具に引っ掛かる事故(2〜8歳に多い)、腰・裾のひもがバスのドア等に挟まれる事故(10〜14歳に多い)を防ぐため、体の部位ごとにルールが決まっています。「年少」=服の呼び方120まで、「年長」=130〜160です。
図5 JIS L4129の部位区分。部位ごとに下表のルールが適用される
| 部位 | 年少(〜120) | 年長(130〜160) |
|---|---|---|
| A:頭・首まわり | 引きひも・装着ひも・装飾ひも全面禁止。調節タブは75mm以下 | 引きひもの自由端禁止・絞ったときのループ円周150mm以下。装着ひも・タブ75mm以下 |
| ショルダーストラップ | 前後を1本でつなぐ構造。装飾ひもは自由端なし・ループ円周75mm以下・伸縮ひも不可 | 自由端は締結点から140mm以下・ループ円周75mm以下 |
| B:胸・腰(内側・外側とも) | 引きひもの突き出しは開いた状態で各端140mm以下、閉じた状態で280mm以下(ループ円周も280mm以下)。装着ひも・装飾ひも・タブは140mm以下。後ろ結びベルトは360mm以下(年少は裾から垂れ下がり禁止)・前結びも360mm以下 | |
| C:股下(裾) | 裾から垂れ下がるひも禁止。くるぶし丈の服は裾ひもを完全に内側へ。調節タブは縦140mm/横100mm以下 | |
| D:背中 | 背中から出る・背中で結ぶひも禁止(結びベルト・帯のみ例外)。タブ75mm以下 | |
| E:袖 | 長袖の袖口ひもは完全に内側へ。半袖(肘上)の突き出しは75mm以下 | 同左。半袖の突き出しは140mm以下 |
| 共通 | ベルトループは円周(または接合点間)75mm以下。ファスナ引手の装飾は75mm以下(くるぶし丈の裾では下方へ10mm以下)。その他の部位の突き出しは140mm以下。頭・首の伸縮ひもは顔面損傷のもとで原則不可 | |
| 対象 | 「一定荷重で外れる安全具」の扱い |
|---|---|
| 子ども服(JIS L4129) | 荷重による例外規定はなし。長さ制限・部位禁止がすべてで、「外れる部品を付けたから長くてよい」は不可。フードのみ附属書F(参考)で「引っ張ると外れる構造が望ましい」とされるが、荷重値の規定はない |
| おもちゃの首掛けひも(EN 71-1) | 固定ループになる首掛けひも・ストラップはブレークアウェイ必須。分離試験で25±2N(約2.5kgf)の引張により分離すること。「引っ掛かって体重がかかれば確実に外れ、通常使用では外れない」水準 |
| 名札・キッズ携帯ストラップ等 | 公的規格はなく、業界慣行として分離式セーフティパーツが普及(分離荷重は各社基準)。設計するならEN 71-1の25Nが参考値になる |
服で安全具方式が採用されていないのは、洗濯や付け替えで分離機能が劣化しやすく、長さ管理のほうが確実だからです。首に掛かるループを製品に作る場合は「そもそもループを作らない → 作るならブレークアウェイ25N」の順で検討を。
| ハザード | 評価方法 | 設計のコツ |
|---|---|---|
| 切り傷(エッジ) | シャープエッジテスター(規定テープの切れで判定) | 成形品の合わせ目(パーティングライン)のバリ取り、板金端の折り返し、面取り・R付け |
| 刺し傷(ポイント) | シャープポイントテスター | 先端R≧規定値。折れて鋭利になる素材(硬質PSなど)を薄肉で使わない |
| 木のささくれ | 目視・触診 | 研磨と面取り、割れにくい木種の選定 |
| 部位 | 考え方 | 使うデータ |
|---|---|---|
| 指 | 指が入る穴は、奥で細くなって抜けなくなる形状・回転部への到達がNG。「指が入らない」か「余裕をもって抜ける」かの二択に | 指の太さ:1歳の小指 爪基部幅 約7.9mm・人差し指 約8.7mm →からだ寸法帳の指データでP95まで確認 |
| 頭 | 頭が入って抜けなくなる開口(棚・柵・遊具的な製品)を作らない。「胴は通るが頭は通らない」寸法帯が最も危険 | 頭囲・頭幅のパーセンタイル(からだ寸法帳の子どもタブ) |
| 可動部 | ヒンジ・折りたたみ機構のせん断点に指が届かない構造(カバー、隙間管理) | JIS S 0121の試験プローブ+JIS S 0122(部品の外れ) |
図6 「合理的に予測可能な濫用試験」の4本柱。試験後に小部品・鋭利端が生じないことが合格条件
| 物質・項目 | 対象 | 規制値・要求 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ホルムアルデヒド | 生後24か月以下向けの繊維製品(肌着・寝具等の指定品目) | 吸光度差0.05以下(≒16µg/g)=実質「検出せず」レベル | 家庭用品規制法 |
| ホルムアルデヒド | 一般の下着・寝衣等(直接肌に触れるもの) | 75µg/g以下 | 家庭用品規制法 |
| フタル酸エステル類(DEHP・DBP・BBPなど) | おもちゃの可塑化材料(塩ビなど)、口に接触する部分 | 0.1%以下(物質・部位別の規定あり) | 食品衛生法 |
| 重金属の溶出(鉛・カドミウム等) | 塗膜・材料 | 溶出試験の限度値(物質別) | 食品衛生法・ST基準(EN 71-3系) |
| 特定芳香族アミン(アゾ染料) | 繊維・革製品の染料 | 規制対象(詳細は法令参照) | 家庭用品規制法 |
起毛した布・ぬいぐるみは表面を炎が走る「表面フラッシュ」が起きやすく、ST基準第2部・EN 71-2で燃焼速度などが規定されています。起毛素材や綿毛布様の生地を使う場合は必ず可燃性試験を。セルロイド様素材は使用不可です。
設計レビューにそのまま使える形にしました。印刷して試作品の横でチェックしてください(☐はチェック欄)。
| テーマ | リンク |
|---|---|
| マークの意味(入門) | 消費者庁:子ども用品のマークの意味/政府広報:STマークとは |
| おもちゃ(ST基準) | 日本玩具協会:ST制度/NITE:おもちゃの法規制まとめ/経産省:玩具安全の論点(小部品・小球の解説) |
| 子ども服のひも | JIS L4129 本文/経産省:子ども服の安全基準/ボーケン解説 |
| 服のサイズ | JIS L4001 本文/からだ寸法帳(姉妹サイト:人体寸法データ) |
| 化学物質 | 東京都:ホルムアルデヒド規制Q&A |
| 育児用品・共通試験 | NITE:乳幼児用製品の共通安全対策/製品安全協会(SG基準・品目別) |
| 試験機関 | 日本文化用品安全試験所/カケンテストセンター/ボーケン品質評価機構/JCII 化学研究評価機構 |
| 設計思想 | 経産省:キッズデザインの推進/キッズデザイン賞:審査のポイント |